問題解決型学習、通称PBL。
オリジナルはProject Based Learning。
教育業界の悪い癖で、教育関係者は何事も「大げさ」に言ってしまう。
プロジェクト学習や問題解決型学習というと、
なんだか「すごそう」な問題を解くイメージがある。
例)「環境問題の解決!」
例2)「貧困の撲滅!〜いま私たちにできること」 などなど。
・・・しかし、デューイが言ったような意味の問題解決型学習はもっと単純。
例)「今日の晩ごはんは、カレーか肉じゃがか、どっちにしよう?」
例2)「お腹痛い・・・。きょう学校行こうか、行かないか、どうしよう?」
・・・どちらの例も、ある意味「しょうもない」。
しかし、まぎれもなく、「どちらにするか」という問題を解いている。
その意味でまぎれもない「問題解決型学習」なのだ。
・・・こんな話を、大学院で教授から教えてもらった。
それ以来、おおげさでなく、日常の延長でできる問題解決型学習について、思いを馳せるようになった。
1976年に設立されたマーストリヒト大学は、設立当初から、独自に「問題解決型学習方式(PBL方式)」を取り入れてきた大学です。このPBL方式は、採用後30年を経た現在、国内外の大学からも注目されています。(…)
PBL方式は、学生の〈自立性〉〈起業精神〉〈問題解決への指向性〉を養うことを目的とするものだと大学は説明しています。
大学生たちは、入学後すぐに10人未満の小グループで共同学習を始めます。それぞれの科目では指導段階ごとに、学生たちが〈問題解決〉研究に取り組むためのきっかけとなる事例がいくつも用意されています。この事例というのは、私生活の中で、あるいは、学生たちが将来就く仕事の現場で生じると考えられる様々な問題の場面や状況を設定、表記したものです。この事例の中に示された問題を解決するために、学習中の科目の知識を駆使して、小グループのディスカッションのなかでブレーンストーミング(創造的集団思考法)をし、問題となる店を絞り、それを元にして自主研究をしていきます。
小グループのディスカッションには、それぞれチューターと呼ばれる指導者がついており、学生たちのグループ討議のプロセスを監視し、討議の進む方向やレベルによっては、必要に応じてコメントを加えます。(リヒテルズ直子, 2006, 『オランダの個別教育はなぜ成功したのか』平凡社.52頁)
ポイントは「学習中の科目の知識を駆使して」という部分。
こういうと、さも「いま学んでいることを、問題解決に役立てているなんてスゴイ!」と思ってしまう。
でも、考えてみたら、それはある意味「あたりまえ」の話。
新聞を読んでいて、よく知らないニュースが出てきた場合、私達はどうするか?
普通は「きっとこんなことだろう」と推測をする。
・・・これはこれまでに学んできたこと・学んでいる途中のことをもとに推測をすることにほかならないのではないか?
つまり、「学習中の科目の知識を駆使して」とは、社会経験の中で得られた知識・経験を総動員して、「よくわからないニュースを解釈する」行為それ自体を指すのではないか?
こう考えた場合、「問題解決型学習(PBL)」というのは、「なんかスゴそう」な教育とは言えなくなる。
むしろ生きること自体が問題解決学習なのだ。
ふつうに生き、ふつうにものごとを考えていたら、それがそのまま問題解決型学習になるに決まっている。
そうならないからこそ、「ふつうの」学校教育は終わっているわけである。
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