久しぶりに、心が震えるビジネス書を読んだ。
それが本書『働く君に贈る25の言葉』。

そうか、君は課長になったのか』の著者で、
東レの取締役を務めた佐々木氏の著書。

この人の話、私はDVDで見たことがあるけれど、
それはそれはすごい人。

 

息子さんが自閉症で、奥さんが鬱病+自殺未遂数度。
仕事でも忙しい部署の部長。
しかも、家族が東京にいるのに、大阪勤務
毎週、関東に戻り、家事をやり、月曜には大阪に出勤。
もう、「考えたくない」生活。

 

私の人生にも、苦しい時がありました。
覚悟を揺るがせるような試練が、次々と襲い掛かったのです。
長男の俊輔は自閉症という障害をもって生まれました。自閉症とは先天的なもので、育て方で治るものではありません。私たち夫婦は、ほとんど毎日のように、彼をサポートするために走り回らなければなりませんでした。(・・・)|
さらに、試練は訪れました。
妻の浩子が肝臓病を患い入退院を繰り返すようになったのです。しかも、俊輔にまつわる心労に加え、自分の病気のために家族に負担をかけていることを気に病んだことから、うつ病を併発するに至りました。
この間、会社ではまるで私の力を試すかのように、さまざまな部署への転勤が繰り返され、東京と大阪を6度も移動せざるをえませんでした。
妻のうつ病がひどかった時機には、経営企画室長という重責を担っていました。経営と現場の結節点に位置する要の役職でしたが、何人もの役員を上司とする立場でしたから、極めて大きなストレスを私に強いるものでもありました。
ときに叫び出したいような思いを抱えながらも、私は家族と仕事を両立させるために必死の思いで耐えていました。




しかし、決定的な出来事が起こります。
3度に及ぶ妻の自殺未遂です。
3回目のときは、もしも娘がたまたま発見しなけれな、妻は命を落としていたでしょう。(・・・)|

この直後の私はほとんど限界に来ていました。「何のためにこんなに苦労しているのか」と思い、「これはいったい何なのだ」「私の人生はどうなっているんだ」と、ほとんど自暴自棄の気持ちでした。
それでも、朝は訪れ、夜は来ます。私の気持ちも、少しずつ落ち着きを取り戻していきました。そして妻が、「ごめんな、お父さん、迷惑ばかりかけて」と心底情けなさそうに言うのを聞いて、「いちばん苦しんでいるのは彼女だろう。私ではない」と思い至ったのです。
「何のためにこんな苦労をしているのか」といった「何のため」という問題ではないのだ。要は、自分が出会った人生であり、自分が選んだ人生なのだ。それは運命として引き受けるしかない。恨んでも愚痴を言っても、事態は変わらないのだ−−。
私は、そう自分にいい聞かせて、再び人生に立ち向かう気力を取りも出したのです。(175-177頁)

 

その結果、奥さんから
この人からは、親よりも深い愛情をいただきました」(178頁)と言ってもらえるに至る。
この一言が、どれだけ嬉しかったことか」(178頁)。

 

いつも思い出すのは、「運命は引き受けよう」と言って微笑む母の姿です。26歳で未亡人になって、男4人兄弟を育てるために働きづめに働いた母です。しかし、母は愚痴を言うことなく、どんなときでもニコニコ笑っていました。
母は、いつも私の心の中にいました。そして、こう語りかけてくれたのです。|
運命を引き受けて、その中でがんばろうね。
がんばっても結果が出ないかもしれない。
だけど、頑張らなければ何も生まれないじゃないのー。(178-179頁)

 

不覚にも、涙してしまったところです。
運命を引き受けることこそ、生きるということなのです」(179頁)の名言は、いつまでも覚えていたいと思っています。

特にいいのは、『それでもなお、人を愛しなさい』からの引用部分。
孫引きですが、これは名言です。

1 人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい。

2 何か良いことをすれば、隠された利己的な動機があるはずだと人に責められるだろう。それでもなお、良いことをしなさい。

3 成功すれば、嘘の友達と本物の敵を得ることになる。それでもなお、成功をしなさい。

4 今日の善行は明日になれば忘れられてしまうだろう。それでもなお、良いことをしなさい。

5 正直で素直なあり方はあなたを無防備にするだろう。それでもなお、正直で素直なあなたでいなさい。

6 最大の考えをもった、もっとも大きな男女は、最小の心をもった、もっとも小さな男女によって打ち落とされるかもしれない。それでもなお、大きな考えをもちなさい。

7 人は弱者をひいきにはするが、勝者の後にしかついていかない。それでもなお、弱者のために戦いなさい。

8 何年もかけて築いたものが一夜にして崩れ去るかもしれない。それでもなお、築き上げなさい。

9 人が本当に助けを必要としていても、実際に助けの手を差し伸べると攻撃されるかもしれない。それでもなお、人を助けなさい。

10 世界のために最善を尽くしても、その見返りにひどい仕打ちをうけるかもしれない。それでもなお、世界のために最善を尽くしなさい。(39-40頁)

 

しみじみ、ジーンとくる。

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