アメリカではアメフトの試合の視聴率はものすごく高い。プロのアメリカン・フットボールチーム全米一を決めるのがスーパーボウルである。毎年2月に開催され、現在までなんと21年連続で視聴率40%を獲得している恐ろしいスポーツイベントとなっている。
アップル社の戦略について本書はこう述べる。「スーパーボウル放映中にテレビ・コマーシャルを打つことによって、アップル社は、単に視聴者に新型マッキントッシュのことを知らせただけではない。同時に、多くの他の人々も新型マッキントッシュのことを知らされたということを、視聴者に伝えたのである」(13)。
このように本書では、宣伝というものが「自分以外の人もこれを目にしている」という想像が成立する場合に効果的である、という事実を伝える。「他の人も同じ物を目にしている」という想像こそ、人びとに強烈なメッセージを与えている。そういった意味で宣伝を同じ時に見るということは現代の儀式なのだと本書は述べる。
「電話を受けた人は、他の人々も同じような電話を受けたか、どれくらいの人が受けたかを知らない。一方テレビ・コマーシャルは、少なくともある程度は共通知識である。なぜなら、テレビ・コマーシャルを見ている人は、他の人々も同じテレビ・コマーシャルを見ていることを知っているからである」(16-17)。
宣伝というのは個人に打てばいいものではない。むしろ、「他の人も同じ宣伝を見ているのだ」という想像が成立することに意味があるのだ。