「あばあちゃんは、必殺仕事人が好きなんや」
故郷・兵庫にいる母方の祖母が私に語ったことがある言葉だ。
私の祖母のように、「時代劇をよく観る」という老人は数多くいることだろう。けれど、「時代劇をよく観る」からといって、「お婆ちゃんの誕生日のお祝いに、ずっと時代劇の映る衛星放送を契約したよ」とすることは、必ずしも喜ばれることではない。
通常、祖母は選択可能なチャンネルの中で、相対的に個人的趣味にあう番組を選んで視聴している。通常のテレビにおける選択行動と、「これ!」と決めたお気に入りばかりをずっと視聴するという衛星放送的選択行動とでは、天と地ほどの差があるのだ。
だから、「時代劇好きな祖母が喜ぶ」と思ってスカパーなどの衛星放送を導入することは、双方不幸になることがある。祖母は別に時代劇ばかりを観たいわけではないのに、子ども(孫)に遠慮してそれを視聴しないといけなくなるからだ。
だから、テレビの宣伝でも気をつけないといけない。「スカパーではお好きな番組をいくつも契約できます。ご老人が喜ぶ時代劇専門チャンネルを契約されますと、親孝行ですよー」。こんな殺し文句に負けてはいけないのだ。