上田敏は「リハビリテーション医学」の日本での第一人者。
私は、リハビリテーションで一番大事な特徴は、「プラスの医学」でもあることだと思っている。
人間が本来もっているプラスの面に着目して、本人も気がついていない隠れたプラスの面を見つけ出し、それを引き出して発展させる。それが生きる具体的な技術としての「コーピング・スキル」であり、生き抜く力としての「心理的コーピング・スキル」である。そして、このようにして増大させたプラス面で、失ったマイナス面を補っていくと、うまくいけば、病気になる前よりもむしろいい状態になることも夢ではないのである。(230)
コーピング・スキルについて著者はこう説明する。
病気と闘ってなくしてしまおうという「闘病」とちがって、コーピング・スキルというのは、病気や障害があることは認めて、それとうまくやっていく技能の意味である。英語で「コープ・ウィズ(cope with)」というと、ちょっと扱いにくい相手だがなんとかうまくやっていこうという意味であるが、それと同じことである。(191-192)
この発想はリハビリテーションだけに通じるのでは、ない。
教育においても「長所を伸ばす」ことがよく語られる。
また経営学でも、ドラッカーは「強みを活かす」経営を語っている。
プラス面(強み)を伸ばしていくと、マイナス面が隠れていく。