根井雅弘『経済学3つの基本 経済成長、バブル、競争』ちくまプリマー新書,2013.

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ちくまプリマー新書や岩波ジュニア新書は、中高生向けに学術を語る。
それだからこそ、大人が読んでも十分に役立つ。

今日はそんな勉強の一環で、『経済学3つの基本』の抜粋集。

 

ふつうの経済学の教科書では、最初のほうで「消費者主権」という概念を習いますが、これは企業は消費者の嗜好や選好を忠実に反映するような生産をおこなうという規定を指しています。しかし、ガルブレイスは、これは現代資本主義の特徴を捉えていないと考えました。なぜなら、現実には、企業のほうが広告や宣伝などを効果的に駆使して消費者の欲求を創り出しているからです。この意味で、欲求は生産に「依存」していることになります。それゆえ、ガルブレイスは、これを「依存効果」と呼びました。(19)

ガルブレイスの眼は、たんに経済成長至上主義への疑問に向かっているわけではありません。「依存効果」が民間の経済部門に協力に作用している限り、資源は民間部門に優先的に配分されるはずです。それゆえ、豊かな社会であるにもかかわらず、公共部門がきわめて貧しい状態に放置されやすいのです。ガルブレイスは、これを「社会的バランス」の欠如と表現しましたが、これはもちろん「市場」に任せるだけでは解決できない問題です。
ガルブレイスは、このように、アメリカのような豊かな社会でも依存として公共部門の「貧しさ」が残っているという問題を、『ゆたかな社会』というタイトルの本の中で見事に指摘しました。私たちはそのタイトルに紛らわされてはなりません。(22)

マーシャルは、もともと、経済学が「富の研究」であると同時に「人間の研究」でもあることを強調していました。そして、人間性というのは時代とともに「進歩」するし、またしなければならないと堅く信じていました。(35)

 

マーシャルはよく「余暇を立派に利用することを学ぶ」と表現しましたが、現代日本では、たとえ「余暇」ができたとしても、それを活かしきっていない、あるいは、余った時間をまるでルーチンワークを消化するかのように無自覚に費やしているような若者をときどき見かけます。しかし、真の豊かさを実現するためには、自発的かつ明確な目的意識をもって余暇をみずからの潜在能力を伸ばすために使うような態度を身につけるべきではないでしょうか。(37)

私たちはふだん「競争」という言葉を何気なく使っていますが、以前にもどこかに書いたように、偉大な経済学者の「言葉遣い」には意味があることを繰り返し指摘したいと思います。古典派の人々は、資本が最大の利潤率を求めて自由に書く産業間を出入りする可動性のことを「競争」と理解することによって、私たちの生きている社会がまさしく「資本主義」に他ならないことを教えてくれました。(97)

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