アニメ映画では必ず主人公たちが「かつてない危機」に陥る。それがTVで紹介されるのを見て、視聴者は劇場に向かう(そして観客になる)。人々は「かつてない危機」に弱いのだ。体制が崩れるというカタストロフィーこそが、「一体どうなるのだろう」という不安と同時にカタルシスをもたらすのである。
「かつてない危機」が日常にはない(リストラされるまではリーマンショックはショックではない)。ゆえにアニメという一見平和に見える手段を通して、人々は「かつてない危機」を求めにいくのである。決してアニメは「アニメ的日常」の延長を映画のなかで行うことはしない(そんなことをするのは「水増ししたテレビ」である)。