「教える」モデルからの「反転」〜反転授業は「学び」を復権させるか?〜

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書評:ジョナサン・バーグマン/アーロン・サムズ『反転授業』オデッセイコミュニケーションズ,2014.

最近の流行語、「反転授業」。

反転?
授業の、何を?

本書の表紙に書いてある言葉が一番わかり易い説明となる。

「基本を宿題で学んでから、授業で応用力を身につける」。

反転授業(Flip you’re classroom)。
これは既存の授業・学校のあり方を入れ替える力を持った取り組みである。

カーン・アカデミーの創設者の自伝にも紹介のある取り組み。

予め授業を録画し、それを生徒が自宅で観る。
学校ではその内容を元に演習やディスカッションを行う。
すでに基本を理解しているため、より高度な授業や
個々人の習熟度に応じた学習ができる。

まさに「「反転」が「個別化」を助ける」(29)。

単なる遠隔授業ではないので、直接会って指導すべき内容を優先して授業できる。
「反転モデルはオンラインと対面指導を融合した「ブレンド型」と呼ばれる形式の理想型だと確信している」(60)というのも、そのとおりの話だ。

特徴の1つは、授業や講義を気軽に「一時停止」できること。
PCの動画なら、どんなに止めても・スローにしても、誰にも怒られない。
自分のペースで学習できる。
PCでできるからこそ、発達障がいを持っている生徒も自分のペースで学習できる。
支援ツールも使い放題。

無論、自宅は教室とは違う。
テレビにゲーム、ベッドと誘惑は数多い。
だからはじめのうちに学習のルールづくりを行う。
集中を阻害するものをなくすほか、
ノートの取り方も指導する(コーネル式ノートなど)。

反転授業において、授業の主導権は生徒に移る。

「反転授業は明らかに生徒が主体であり、教師主体ではない」(46)。
「教室における教師の役割は情報を伝達することではなく、生徒を支えることである」(46)。
「教師が学習プロセスの主導権を手放し、生徒がみずから指揮を執る。教育のプロセスが本人の手にゆだねられるのだ」(123-124)。

教員が「説明する人」から、「支援する人」に変化する。
これ、私のような通信制高校の教員からすると当然であるが、
大きな変化であるといえるだろう。

まさにインターネットの発展によって成立した理想の授業。

優秀な教員のビデオさえあれば、単なる情報伝達はその動画に任せればいい。
東進ハイスクール式に、優秀な教員の動画を皆が見ればいい。
その上の応用や補充をやるのが、その学校の教員であってもいい。

こんな分業も可能となる。

私は、あまり既存の「学校」モデルが好きではない。
だから、本書のような「反転」モデルは非常にワクワクする。

 

反転授業は本来の「学び」を復権させる取り組みである。
教員の自己満足である「教える」を捨て、生徒の「学び」につなげる。

それが目標である。

 

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