あなたは今日、何回「ちゃんと」という言葉を聞いたでしょうか?
「食事の前に、ちゃんと手を洗いなさい」
「明日はもっとちゃんとした服装にしてきなさい」
「ちゃんと話を聞いていたのか?」
「仕事くらいちゃんとしないとダメだぞ」
「ちゃんと」という言葉は、日常会話で「死ぬほど」使われます。
そして困ったことに、大部分の「ちゃんと」は、言う側の裁量で決められます。
例えば、
「食事の前に、ちゃんと手を洗いなさい」
の場合、言う側は、
「食事の前は石鹸でゴシゴシと手を少なくとも10回くらいはこすり、水で綺麗に洗い流して、清潔なタオルなどで手を拭くこと」を想定しています(たぶん)。
でも言われる側にとっては、「水を流しながら2回ほど手をこする」ことが「ちゃんと手を洗う」の範囲なのです(たぶん)。
「明日はちゃんとした服装にしてきなさい」の場合、言う側は、
「明日はアイロンのかかったワイシャツを着て、ネクタイも左右対称・ベルトの上くらいまでで締め、折り目の着いたスラックスを履いて、光沢のある革靴を履いてくること」を想定しています(たぶん)。
そのうえ、「頭は寝ぐせを直し、七三分けにはしなくとも自己主張のある髪型にはしてほしくない」というのが「ちゃんとした服装」の範囲です(たぶん)。
でも言われる側にとっては「とりあえずワイシャツとスーツであればなんでもいいんでしょ」という意味になるのです(たぶん)。
「ちゃんと話を聞いていたのか?」「仕事くらいちゃんとしないとダメだぞ」も、言う側にとっては「目を見て、メモを取って頷きながら話をきく」ことや
「勤務中は携帯電話を開かず、黙々とPCに向かい、少なくとも5秒に1回くらいはクリックの音かキーボードの音がして、目はディスプレイに釘付けになっており、会社のアドレスで社用メールを送る」ことが「ちゃんと」の範囲なのです(たぶん)。
でも言われる側にとってはもっとゆるい状態が「ちゃんと」の範囲なのです。
具体例ばかり出してしまいました。
でも大事なことをここでは伝えています。
それは「ちゃんと」の範囲は伝わることはない、ということです。
世にいる親や教員・部下と接する上司たちは「ちゃんと」を使いたがります。
でもその「ちゃんと」は伝わることはないのです。
つまり、「ちゃんと」は理解されないのです。
「ちゃんと」は禁断の言葉です。
使うと、相手が100%「理解できなく」なります。
自分の思っている範囲の「ちゃんと」を、聞き手が理解することは100%、ありません。
であれば、親・教員・上司は「ちゃんと」を使ってはいけないのです。
「ちゃんと」の代わりに、自分の考える「ちゃんと」の範囲を具体的に伝えなければならないのです。
英語で「チャント」は「祈る」という意味。
日本語の「ちゃんと」はお正月の初詣同様、「叶わない」意味の「ちゃんと」なのです(わかりにくい)。
これからは自分の考える「ちゃんと」の中身・範囲を、「ちゃんと」伝えていくことが必要ですね。