ドラッカーと言えば『マネジメント』、という風潮がある。
でも、『マネジメント』は本当はものすごく膨大な本。
日本人がイメージする『マネジメント』は「エッセンシャル版」、つまり「要約版」である。
だから、意味がわかりにくかったり、説明が不足(=端折る)気味。
「ドラッカーって、難しいよね」といわれるのは、みんな『マネジメント』から始めてしまうためらしい。
かくいう私も、この罠にかかっていた。
ドラッカーの本当の入門はここで取り上げる『経営者の条件』である。
専門家に聞いたのだから、間違いない。
『経営者の条件』ではあるが、これはリーダーシップや組織運営のイロハが書かれており、たいへんためになる。
特に私が感銘をうけたのは次の一文。
「「どのような貢献ができるか」を自問するということは、自らの職務の可能性を追求するということである」(72)
仕事の本質は「貢献」にある。
ドラッカーはそう言う。
「自分はこの組織の中で、どんな貢献ができるか」
「自分がこのお客さんに、どんな貢献ができるか」
そのためには、「「期待されている成果は何か」を自問することからスタートしなければならない」(30)。
つまり、自問し続けていくことで、仕事の水準があがり、無駄な努力がなくなっていくのである。
エグゼクティブに必要なのは、この「貢献」をメンバーたちが出来るように促していくことだ。
そのためにエグゼクティブは「判断の基準」を次々と示し、方針を決めていく必要がある。
「エグゼクティブに必要なものは、本当に重要なもの、つまり貢献と成果に向けて働くことを可能にしてくれるものの判断の基準である」(16)
これによって成果を上げることこそ、エグゼクティブの本質である。
ドラッカーは、成果をあげるためのコツをいくつも紹介してくれる。
「成果をあげるためには、時間をかなり大きなまとまりとして使わなければならない。小さなまとまりでは、いかに合計の時間が多くとも不十分である」(39)
「重要なことに取り組めるようになるためには、ほかの人間にできることは、ほかの人間にやってもらうしか方法はない」(50)
「成果をあげるエグゼクティブは、実際に必要な時間以上に、時間の余裕を見る」(139)
「成果をあげるエグゼクティブは、原則や方針によって一般的な状況を解決していく。そのため彼は、ほとんどの問題を単なるケースの1つとして、すなわち単なる原則の適用の問題として解決していくことができる」(176)
「自ら出かけていって、自らの目で行動の現場を見ることを当然のこととしないかぎり、ますます現実から遊離することになる」(194)
「半分の行動はない。半分の行動こそ、常に変わることなく間違いであり、必要最低限の条件、すなわち境界条件を満足させえない行動である」(217)
エグゼクティブの役割は「成果をあげる」こと。
これができるようになるために、『経営者の条件』はある。
…職場ではヒラのヒラ教員である私にとって、今後の生き方を考えるいい資料となる本となった。