橋下徹さんが府知事に就任したのは2008年。
そして大阪市長に就任が2011年。
その間、2010年に「大阪維新の会」を設立し、
「日本維新の会」などで一世を風靡。
昨年の2015年に大阪市長を辞めて、
今年辺りから再びバラエティ番組で姿を見るようになりました。
これだけ短時間に政界に影響を与えた「タレント議員」はかなりめずらしい存在です。
大阪府知事時代、
橋本府知事の「特命機関」として、
「都市魅力化」が発足しました。
そこの課長に、民間人から無試験で選ばれたのが中村あつ子さん。
『私と橋下知事との1100日』の著者です。
サブタイトル「民間出身の女性課長が大阪府庁で経験した「橋下改革」」。
一見「暴露本かな?」と思い手に取りました。
中身は全く逆。
大阪府庁という「堅い」お役所に入っていった女性経営者の奮闘の様子が描かれていました。
その中で「大阪府庁は”ケッタクソ社会”なのだ」(63)という指摘があります。
大阪弁で「けったくそ悪い」といえば「気分が悪い」とか、「いまいまいい」といった意味で、あくまでオフィシャルではなく内々に表現する時の言葉です。「卦体(けたい)」、つまり占いの結果が悪いことに「糞」を付けて悪いことを強調しています。(63)
そのケッタクソ社会。
たとえば、別の部局と連携して仕事をしなくてはならない時などに、府庁では(とくに男性は)「相手の誰が話をもってきたか、どのように言ってきたか」などに異常にこだわるのです。それで釣り合いの取れないような相手だったり、手順に納得がいかなかったりすると、仕事の内容はさておき、
「ケッタクソ悪い、やめとこか」
となったりするのです。要するに、男の面子が立つかどうか、それが大切なわけで、府民が喜んでくれるかどうかというところに仕事の価値基準があるわけではないのです。(63-64)
そこに民間出身の女性課長として入っていった苦労。
大変なものだったと思います。
3年間働いたうちの1年目は、それこそ「お役所」のルールに振り回されて終わってしまった、とのこと。
2年目。
周囲と軋轢とストレス。
3年目には、少しずつ周囲とも協力し「仲間」として仕事ができるようになってきたそうです。
同じメッセージを伝え続ける。
その大事さを知りました。
この本で印象的だったのは、
著者の中村さんが大阪府庁に入った際、
「あるもの」がないことに衝撃を受けた部分です。
それは「ホワイトボード」。
いまどきホワイトボードのない組織も珍しいですが、
大阪府庁には「なかった」そうです。
それは会議の際、
紙を配りそれに目を落とすだけなので
「ホワイトボードがいらない」のです。
著者の中村さんは「ホワイトボード」を予算で買おうとしました。
が、総務の許可が降りませんでした・・・・。
仕方なく倉庫に眠っていた古いホワイトボードを引っ張り出してきます。
ホワイトボードを導入したことで、どんな変化があったのでしょう?
会議の際、
書類だけだとただ書類を見て終わりになります。
ホワイトボードを導入すると・・・
時間が効率的に使えるし、論点がはっきりし、頭の整理ができます。それで目線が上向きになり、出席者が顔を向けあうようになりました。
職員が一緒に考えることに意味があるのです。そうすることで前向きな議論ができて会議が活性化します。そんなミーティングを経て「大阪に恋します。」という局の合言葉を誕生させたのは、先にも触れたとおりです。(109)
私もファシリテーションをやる側なので、
ホワイトボードの意義はよくわかります。
ホワイトボード。
議論を整理する以上に
メンバーの「一体感」すらも出すことが出来る
便利ツールなのです。
中村さんは、ホワイトボード導入でアイデア出し・「職員の一体感」を出すなどの「小さな工夫」を積み重ねていきます。
課内の全メンバーとの30分ずつの面談の実施もその一つ。
「小さな工夫」と「小さな達成感」の積み重ね。
そこからメンバーとしての一体感や大阪府庁という
「ケッタクソ社会」すらも変えていくことができます。
そういう点で印象的でした。