子どもの冒険の自由と、教育組織としての安全確保義務の軋轢。

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 もうすぐ、私がボランティアをしているもう一つの組織の活動が始まる。中学・高校の寮のボランティアである。夏休みが終わり、新学期が始まるからだ。寮生の安全確保や見回りなどが仕事の内容。後は寮生と語り合って有意義な時間を過ごしている。

 いつも着任のたびに思うのは子ども(寮生)の「冒険」の自由と、教育組織としての安全確保義務との軋轢である。寮生は時々、かなりのムチャをする。行事前の徹夜、いまは減ったが寮の夜間抜け出しなどである。私はボランティアの立場からこういった行為を止めに入る。万が一、事故・怪我があった場合、学校組織としての責任が発生するからだ。けれど、それがときに寮生の「冒険」「挑戦」の自由を阻害しているように思うときもある。
 フリースクールの場合は少し異なるようだ。『フリースクールとはなにか』(NPO法人東京シューレ編、教育資料出版会、2000年)という本がある。フリースクール・東京シューレに通う子ども達の日常を綴った本である。サブタイトルの「子どもが創る・子どもと創る」にあるように、子どもの自発性に任せた活動を行っているのが東京シューレだ。子ども達が「やりたい」という自発性に基づいて、行動を行う。本書に載った内容を見ると、「危険じゃないのか?」と思うものもあった。それでも、「子ども中心の教育」を行うため、大きく抱擁する形で教育活動が日々行われている。
 無論、事故・怪我が起きたときのため、保険をかけたり、スタッフが付き添ったりしているのだろう。けれど、万が一事故が起きたとき、マスコミ沙汰になり「あのフリースクールは何をやっているのだ」という非難にさらされてしまう。
 私のボランティアをしている寮は、安全確保を何度も呼びかけ、事故を未然に防ごうとしている。
 教育において難しいのは、ここに書いた内容であろう。かつて親友のOがゼミにおいて「性教育でも、間違いから学ぶことが重要だ」と発言したところ、顰蹙を買ったと聞いた。「失敗から学ぶ」のは当然重要な考えなのだが、例えば実際に「妊娠中絶」を経験して学ぶというのはいかがなものか、とは思ってしまう。けれど、考え方としえては「失敗から学ぶ」という方向性は成立することであろう。いま参議院議員の「ヤンキー先生」は、公約として「子どもたちが安心して失敗できる社会に」と言っていたことを思い出す。
 教育組織としては子どもが失敗(事故や怪我)しないようにするが求められるが、失敗することから子どもは多くを学ぶ。子どもの冒険の自由とは、この「子どもは失敗からも多くを学ぶ」ということを理論化したものだ。また子どもが自発的に行動を行っていく、ということにもつながる発想である。大人が「安全確保」を行い、失敗をする危険性から子どもの行動を阻害した場合、子どもの成長するチャンスがつぶされてしまうのではないか、と思う。
 私の行っている寮は中学生と高校生の寮だ。ある程度、大人である。安全確保をするのは当然だが、もう少し寮生の自由の幅を広げてあげてもいいのじゃないか、と思うことがある。
 
 けれど、さきほどの「妊娠中絶」の話ではないが、「大失敗」的な失敗をしないよう、大人は子どもに接していくべきでもある。子どもの冒険の自由と教育組織の安全確保義務は、単純なゼロサムゲームではないのだ。片方を求めれば、もう片方が立たなくなるものではない。折り合いをつけながら、バランスを取ることこそが必要なのだ。どの程度まで「冒険」を認めるか否か、という点である。
 この問題はもう少し考えていきたい。
追記
 『千と千尋の神隠し』という映画がある。両親を助けるため、千尋は温泉宿で働くなかで、神様やカオナシのおこす問題を解決していく、というストーリーである。千尋の「冒険」が、物語を成立させている。
 重要なのはこの千尋の「冒険」は、両親には一切見えていないということだ。教員や、地域の大人にも見えていない(別の世界の話だから、当たり前といえば当たり前)。子どもの自主的な冒険はそもそも大人には見えないものではないだろうか。同じく宮崎アニメの『となりのトトロ』も、メイとサツキ姉妹の「冒険」はトトロやネコバス同様、大人には見えていない。
 おそらく寮の中でもフリースクールの中でも、大人(教員やボランティアの学生)には見えない「冒険」が繰り広げられていることだろう。表面化に出た「冒険」のみを、大人が認識する。
 本稿の中で「子どもの冒険の自由と、教育組織としての安全確保義務の軋轢」を問題にしたが、そもそも子どもは冒険をどんなに「安全確保のため、禁止!」されたとしても、大人の見えないところで冒険してしまう存在なのではないかと思っている。ちょうど、高校生のときの自分のように。
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