岡村重夫, 1974『地域福祉論』(新装版 2009)光生館.

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いまの仕事は教育・医療・福祉がクロスする特殊な分野。

 

そのため、ちょこっとずつ、福祉論を勉強中です。

 

知り合いに聞いた福祉論の「古典」として、岡村重夫『地域福祉論』を読んでます。

社会学畑出身の私にとって、とっても「懐かしさ」を感じる本でした。

 

「こんにちの都市化状況のもとでは、一つの地域社会が一つの「コミュニティ」を形成しているのではなく、ひとびとの関心の多様性に応じて成立する各種の集団の成員がもつ「同一性の感情」にもとづいて、同じ地域社会のなかにも、多数の「コミュニティ」が成立するのである」(22)

70年代に「コミュニティ」を言っている先見性に驚きます。

 

「地域社会における各種の環境条件の改善や生活関連施設の整備そのものは、コミュニティづくりではなく、これらの環境改善やサービスの実施が、地域にとって必要であるかどうかを、地域住民が自ら発見し、方針を決定し、そしてそれの実現について必要な集団的活動に参加することによって体験せられる「同一性の感情」を共有することが、「コミュニティづくり」であるという点である」(23-24)

 

「住民参加は、コミュニティの自治と権限の分散を実現することによって、地域民主主義を目的とすると同時に、住民の「同一性の感情」にもとづく相互扶助、相互連帯意識を促進するような方向で進められなければならない」(24)

 

「住民の自己決定ないしは自治自律の要求こそ、コミュニティ形成の出発点であるばかりでなく、この要求の実現を援助することが、コミュニティの開発そのものである」(78)

 

要は「ハコモノ」を作って良しとする福祉ではダメ、ということですね。

住んでいる人が「あれが必要だ」「これが必要だ」と気づき、その人達がやっていく方向で考えるのが大事、ということです。

その過程の中で、例えば札幌市の市民であるという「同一性の感情」が生まれてくるわけです。

 

福祉だけではなく、まちづくりの基本です。

 

この頃は今よりも「プロ市民」は元気でした。

地域を超えた「権利要求型市民」が幅をきかせる時代です。

 

その頃に、地元に根づいた(=ヴァナキュラー)な福祉活動・市民活動を訴えるということ。

とても興味深く感じます。

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